運動学の父 ベルンシュタイン

20世紀前半、ソ連中央研究所バイオメカニクス部門室長ニコライ・ベルンシュタインは、自分の発見した革新的な知見 「運動」の原理が、専門外の一般の多くの人々にとっても 皆が憧れている 「運動」の核心であること、そしてそれを彼らに向けて分かりやすく説明することが科学者としての使命であり良心であると悟ったのであろう、1冊の啓蒙書の発刊を企てた。
人間や動物の身体は、膨大な数の関節と筋肉で構成されており、それらを動かす組み合わせは途方もない数にのぼる。従来の運動理論では、脳がこれらすべての要素を個別に制御していると考えられていたのだが、これは到底現実的ではない。彼は後にベルンシュタイン問題と名付けられることになるこの「制御されるべき自由度が多すぎる(冗長な自由度)」問題を指摘し、この自由度の問題を克服するために、脳は個々の筋肉を制御するのではなく、複数の筋肉や関節をまとめて機能的な単位として制御していると考えた。これが協調構造(運動シナジー)である。そして運動の学習とは、この協調構造をいかに効率的に形成し、環境に合わせて柔軟に使いこなせるようになるかのプロセスであるとした。ベルンシュタインの理論は、運動学習を「あらかじめ決められた運動プログラムの実行」ではなく、「環境との相互作用の中で、膨大な自由度をいかに効率的に組織化し、調整していくか」という探索と適応のプロセスとして捉えることを可能にした。この視点は、今日リハビリテーションなど多様な分野に応用されており、彼は運動学の父とも呼ばれている。
ベルンシュタインの名言集
